泌尿器科(泌尿器科のがん)
泌尿器科(泌尿器科のがん)
泌尿器科は、尿管・尿道・膀胱・腎臓といった尿の生成・排尿に関係する臓器や、副腎などの内分泌系の臓器、前立腺・精巣・陰茎といった男性特有の臓器など、尿路とその周辺臓器を対象とする診療科です。泌尿器科というと少し受診をためらう方もいらっしゃいますが、泌尿器の症状は加齢とともに誰もが経験するもので、恥ずかしいことではありません。当院ではプライバシーに配慮し、患者様との対話を大切にした泌尿器科をめざしております。頻尿、血尿、前立腺、腎臓病、性病など泌尿器で心配なことがあれば、一人で悩まずに、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
腎臓が作った尿が通る道を尿路と言います。腎臓から腎盂、尿管、膀胱を経て尿道から体外に尿が排出されますが、その途中で尿の成分が結晶化し、結石を作ることがあります。これが尿路結石です。泌尿器科の外来で見られる疾患の中でも頻度が高いものと言えます。
腎臓の中にある結石は腎結石、尿管の中にある結石は尿管結石、膀胱の中の結石は膀胱結石、と位置によって呼び方が変わりますが、全てを総称して尿路結石と呼ばれます。特に問題になりやすいものは尿管結石です。尿路の中でも特に狭い尿管内に結石が詰まってしまうと尿の流れをせき止めてしまい、場合によっては強い痛みを生じることがあります。また長期にわたって尿管結石を放置すると、腎臓の機能にも影響を与える可能性もあります。
背中、腰、下腹部の痛みや血尿などが主な症状です。
男性の方が罹患しやすく、男性:女性=2.4:1.0の割合です。罹患率は高く、生涯で男性は7人に1人。女性でも15人に1人は罹患するとされています。
診断のための検査としては尿検査や腹部超音波検査、腹部レントゲン、CTなどがあります。
治療は、小さな結石であれば経過観察のみで自然排石を待ちますが、大きなもの(1cm以上)や待っても排石されない症例は治療介入が必要になることがあります。治療法としては体外衝撃波破砕(ESWL)や経尿道的尿管結石除去術(TUL)、経皮的腎結石除去術(PNL)などがあり、尿路結石の大きさや位置によって適した治療法が選択されます。
普段から尿路結石を予防するためには、バランスの良い食事と適度な運動、十分な水分摂取(お水、麦茶など)が薦められます。水分を摂取する際も、結石の成分の一つであるシュウ酸を多く含むコーヒーや紅茶、またお酒などをたくさん摂取することは逆効果になる可能性があり注意が必要です。
前立腺は男性にしかない臓器です。膀胱のすぐ下、尿道を取り囲むように位置しています。前立腺は前立腺液を分泌し、これが精液の液体成分の一部を担っています。前立腺の形態や機能は男性ホルモンによって管理されています。正常の大きさは20mL前後ですが、加齢によって前立腺の肥大を認める場合があります。40歳代では約20%、50歳代では約40%、60歳代では約70%、70歳代では約80%に前立腺の肥大を認めたという報告もあります。つまり男性は年齢を重ねるたびに前立腺肥大のリスクが高まると言えます。この加齢性変化とも言える前立腺の肥大に、頻尿や排尿のしにくさなどの症状が出現することを前立腺肥大症と言います。
前立腺肥大症の症状としては大きく分けて蓄尿症状(頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁・夜間頻尿)と排尿症状(排尿開始の遅れ・排尿時間の延長・尿線細小・尿線途絶など)、排尿後症状(残尿感)があります。大きくなった前立腺が、内側に存在する尿道を圧迫し、尿道が細くなることで排尿の障害が起こります。排尿の障害は、尿を溜める臓器である膀胱の疲弊を引き起こし、十分に尿が溜められなくなることで頻尿などの蓄尿症状を引き起こしていくと考えられています。前立腺肥大が進み症状が強くなると、ご自身で尿が出せなくなることもあり得ます。
前立腺肥大症の診断には問診(国際前立腺症状スコア;IPSSを用います)、直腸診による前立腺の触診、腹部超音波検査、尿流動態検査(尿の勢いを測ったり、膀胱の中の圧力を測定する検査です)などを行います。
前立腺肥大症の治療としては薬物療法と手術療法があります。
薬物療法は前立腺内部の尿道を拡げるα遮断薬や、男性ホルモンに関する酵素を邪魔することで前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬などがあります。
内服で十分な治療効果が得られない場合は手術治療が検討されます。前立腺肥大症の手術は主に内視鏡手術で行われます。陰茎の先から膀胱鏡を挿入し、前立腺を切除する手術(軽尿道的前立腺切除術;TUR-P)、レーザーを用いて前立腺の内側をくり抜く手術(ホルミニウムレーザー前立腺核出術;HoLEP)、緑色光レーザーで前立腺を溶かすように広げる手術(前立腺レーザー蒸散術;PVP)など様々な方法があります。当院でも2023年より水蒸気を用いた低侵襲な治療である経尿道的前立腺水蒸気治療を行っております。
骨盤の中にある尿を溜めておく臓器が膀胱です。膀胱は筋肉の膜で出来た袋状の形をしており、筋肉の伸び縮みを使って尿を溜めたり出したりしています。加齢や前立腺肥大症、そのほかの神経の疾患などにより膀胱の機能が悪化し、うまく尿を貯めることができなくなることを過活動膀胱と言います。一般的には年齢が上がるとともに過活動膀胱の症状が現れることが多いですが、若い方でも起きる可能性は十分にあります。何回もトイレに行く(頻尿)、突然トイレに行きたくなる(尿意切迫感)、トイレまで我慢できず漏れてしまう(切迫性尿失禁)など、排尿、蓄尿に関わる様々な症状が起こります。
過活動膀胱の検査として、問診(過活動膀胱症状スコア;OABSSを用います)、尿検査、腹部超音波検査などが挙げられます。膀胱炎や尿路結石、膀胱がんなどの悪性疾患でも過活動膀胱と似た症状が出ることがあり、しっかりとした検査、診断が必要です。
治療の基本は薬物療法になります。抗コリン薬やβ3作動薬が用いられます。これらの薬剤は膀胱の筋肉に作用し膀胱を弛緩させたり、急に起こる膀胱の収縮を防ぐ効果があり、頻尿や失禁を減らします。また、薬物療法で効果が不十分な場合は、膀胱にカメラを入れて内側に直接ボツリヌス毒素を注入するボツリヌス療法や、排尿に関連する神経を電気で刺激して症状を緩和させる仙骨刺激療法などが検討されます。
膀胱に細菌が入り込み増殖し炎症を引き起こすことで急性膀胱炎が発症します。泌尿器科外来で最も見られる疾患の一つです。女性に起こることが多く、糖尿病や排尿障害などの基礎疾患をお持ちの方はリスクが高まります。また、冷えや疲労、ストレスも誘引になりえます。
尿路に起こる細菌感染症の一つです。腎臓内にある尿のたまる部位を腎盂(じんう)といいますが、そこに膀胱から細菌が逆流することで感染を起こします。急な発熱、悪寒、吐き気、脇腹や腰の痛みなどの症状が出ます。抗菌薬で治療し、3〜5日ほどで熱は下がりますが、治療が遅れると入院が必要なこともあるので早期の治療が大切です。
前立腺がんは現在男性が有している最も多いがんです。かなり進行するまで症状が無いケースがほとんどで、検診がとても重要になります。早期発見、治療を行えば死亡率は非常に低いがんです。50歳を超えたら年に1度はPSA検診をお勧めします。
膀胱がんは、尿をためる袋状の臓器である膀胱にできるがんの総称です。主な症状は血尿で、他に頻尿や排尿痛などを伴うこともあります。喫煙が大きなリスク因子であり、早期発見・早期治療が大切です。目で見てわかる血尿を認めた場合は早めに泌尿器科に受診されることをお勧めします。治療法は、がんの進行度や種類によって異なり、内視鏡手術、開腹手術、ロボット支援手術、化学療法などがあります。早期の膀胱がんは比較的予後が良いですが、最初が多く、また進行すると他の臓器に転移し非常に予後が悪くなる可能性もあります。目で見てわかる血尿は放置しないで病院にかかるようにお勧めします。
腎臓がんは、腎臓にできる悪性腫瘍の総称です。特に、腎細胞がんと呼ばれるものが多く、腎臓の細胞ががん化してできる腫瘍です。腎臓がんは初期の段階では自覚症状がないことが多く、健康診断などで偶然発見されるケースも少なくありません。症状としては、腫瘍が大きくなると血尿、脇腹や腰の痛みなどが現れることがあります。治療としては、第一は手術治療、さらには薬物療法などがあります。腎臓がんは、早期発見・早期治療が大切ながんです。気になる症状がある場合は、ご相談ください。