日帰り手術(前立腺肥大症)
日帰り手術(前立腺肥大症)
前立腺肥大症は、前立腺の病気のなかで最も頻度の高い病気です。前立腺が肥大して様々な排尿障害が生じてきます。前立腺は直腸と恥骨の間にあり、尿道を取り囲んでいます。そのため前立腺が肥大すると、尿道を圧迫して排尿に関わる症状が現れます。一般的な成人男性の前立腺は、クルミぐらいの大きさと例えられますが、肥大するとみかんや卵ぐらいの大きさになります。
症状としては、夜中に何度もトイレのために起きたり(夜間頻尿)、排尿までに時間がかかったり(排尿困難)、尿線が細くなります。さらに進行すると尿が全く出なくなります(尿閉)。昔は前立腺が大きくなることによってこうした症状が出現すると考えられてきましたが、近年では生活習慣病と前立腺肥大症の相関が報告されています。診断には症状から病気を疑う国際的評価方法(IPSS)や、診察・検査として直腸指診、超音波検査やMRI検査などの画像検査、前立腺がんの腫瘍マーカー検査(採血検査)、残尿測定・尿流量測定があります。治療は薬物療法、手術療法などが主ですが、中間的な治療法として、前立腺高温度治療(前立腺の組織を温めて、組織を変性、縮小させる治療法)があります。
従来の前立腺肥大症に対する手術治療は入院してしっかりと麻酔をかけて行う手術が一般的です(経尿道的前立腺切除術;TUR-Pなど)。当院で行っている経尿道的水蒸気治療(WAVE治療)はRezum(レジューム)という機器を使用する、2022年9月から日本で保険適応になった、体に負担の少ない新しい前立腺肥大症の内視鏡手術です。水蒸気を利用して肥大した前立腺組織を壊死・退縮させますが、術後5年経過時点においても安定した効果を発揮し、また従来の手術に比べて性機能が維持されることも示されています。治療時間は平均10分以内程度と短く、局所麻酔での外来手術としても行えます。治療効果は手術後1ヶ月程度から現れます。
肥大した前立腺組織を尿道から離すことで、尿道を広げる手術です。
当院に来院していただき、術衣に着替えていただきます。手術台に上がっていただき、載石位という体勢(お産の体勢です)で手術を行います。痛み止めの入ったゼリーを尿道に注入し、ウトウトする注射薬を使ってから治療を行います。治療は10分程度で終わります。治療後はウトウトする薬の影響でフラつく可能性があるため1時間程度横になってお休みいただいてからご帰宅いただきます。
治療後は尿道の一時的なむくみが発生し、尿が出せなくなることもあり得るので、尿道カテーテルを1週間ほど留置します。1週経過した後にクリニックでカテーテルを抜去します。
血尿、尿閉、尿路感染、疼痛などがあります。また術後3~7日は留置されたカテーテルの痛みや違和感を感じる場合があります。これらのほとんどは術後早期に発生し、経時的(1ヶ月程度)に改善するものです。
またこの治療は、他の手術手技と比較して性機能への影響が少ないとされていますが、術前の性機能が完全に維持されるかは個人差があると考えてください。
前述しましたが、手術の効果が出るまでに約1ヶ月以上を要する治療であることの理解も必要です。